前号のニュースレターに書いた通り、6月にマレーシアを訪ねました。
長期滞在していた友人から、そろそろ帰国するから遊びに来るなら今だよと言われ、急に行くことにしました。
これまではあまりマレーシアという国に注目することがなかったのですが、ここ数年日本の子どもたちの留学先として人気を集めているので、気になっていました。友人もインターナショナルスクールに留学した中学生の家族として滞在で、今回の旅行では日本人留学生を取り巻く環境や日常生活も垣間見ることができました。
あまり情報を得ていなかった国だったので、滞在中は発見ばかり。友人のありがたいもてなしもあって、とても楽しく過ごせました。
言語オタクとしてまず気になったのは、街の中の看板に中国語がとても多いこと。外務省サイトのマレーシア基礎知識ページによれば全人口に占める中国系は約23%とあり、華人が多いことは知識として知っていましたが、看板の中国語率はその割合をはるかに超えていた印象を受けました。でも、市中では中国語が通じるとのことなので、看板はラテンアルファベットと英語だらけだけれどあまり英語の通じない日本よりは生活言語を反映しているのかもしれません。
スーパーでマレーシア産の豆のインスタントコーヒーを買いたくて、コーヒーの試飲販売に立っていた女性に「このコーヒー豆の産地はどこですか?」をマレー語に訳したスマホ画面を見せたところ、わからなかったようで別の従業員二人を連れてきました。どうやら彼女は中国語を話す人だった模様。結局、私も含め全員が英語で話し、その豆がジョホール州産であることがわかりました。
配車アプリのGrabで乗った車の運転手の大半は英語を話しました。中国語もよく通じました。マレーシアの人たちは日常的に複数言語で生活しているのかもしれません。そのあたりは短い滞在ではよくわかりませんでした。
マレー語はラテンアルファベットで表記されていましたが、これまでのマレーシアの歴史や国民の半数以上がイスラム教徒である点などを考え合わせると、オスマン帝国からトルコ共和国になったときのように、近年使う文字が変わったのではないかと想像できました。
調べてみると案の定で、東京外国語大学マレーシア語ページには「 マレー語の表記には通常、ローマ字が用いられます。マレー語には他に、アラビア文字をもとにして考案されたジャウィ文字による表記法も存在します。ローマ字採用(1904年)以前はジャウィ文字が主な表記法でした」とありました 。
このジャウィ文字、アラビア文字を使ってアラビア語にはない発音のあるマレー・インドネシア語を表記するためにつくられた文字なのだそうで、なんだかアラビア文字が使われていたオスマンル語(現代トルコ語の前身)が思い出されます。
インドネシアでは使われなくなり、マレーシアではまだ使われていて、ブルネイではバリバリの現役だそうです。
たぶん私が旅したのが、イポー、カンパー、マラッカと華人の多いまちだったから少なくて気づかなかったのかもしれません。マレー系が多いところではジャウィ文字の看板も多いとのことなので、もし今度またマレーシアを訪問する機会があったら、ジャウィ文字の看板を見つけてみたいです。
※写真はマレーシアの国章です。このリボンの右側にあるアラビア文字的なものがきっとジャウィ文字ですね?