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もっと安全な中絶を! 私のからだは私が決める! を目指して、アジュマブックスは昨年末、「中絶がわかる本」を発売しました。書籍の発売の直前である12月22日、ラインファーマ社が経口中絶薬の製造販売について厚生労働省に承認申請をしたニュースが一斉に報じられましたが、海外では700円台の薬を、日本産婦人科医会(医会)は「国内価格は10万円程度にすべき」というコメントを出し、女性たちから猛反発が起こりました。
10万円の根拠として、医会の幹事長である石谷健氏は、新聞記者のコバヤシエイスケ氏による取材(注)に答え、「日本で行われた治験費用を製薬会社が価格に上乗せする」+「治験は入院が条件で行われた=治療前後の診察・検査や経過観察が必須」という2つの理由を上げていました。
また、海外での中絶の自己負担が安価な点については、海外では公費補助があるが、日本では納税者である国民の理解を得ることが難しい(レイプの場合は公的補助が受けられます)から、と回答しています。
これまで経口中絶薬の個人輸入は禁止されてきており、多くの母体保護法指定医病院のホームページでは、(WHOが必須医薬品リストに載せるほど安全な薬にも関わらず)経口中絶薬は、大量出血で死ぬ可能性がある、手術より失敗率が高い、子宮外妊娠の場合は卵管破裂の恐れがある……etcと脅してきました。
(海外で安全と認められている薬にわざわざ国内でやる必要があるのか? という)治験に費用がかかったので当面、製薬会社が高価格にしたいのは、百歩譲って、仕方がないとしても、また、日本では「自分の身体の中の胎児」であっても、「母体保護法」によって母体保護法指定医以外の人が堕胎すると「堕胎罪」にあたり、1年以下の懲役と定められているため、今のところ指定医師の診察・検査・経過観察が必須で、それなりの費用がかかってしまう、というのも、これまた、千歩譲って仕方がないとしても、中絶の費用を公費で負担すべきではないと思う国民が多い、というのはなぜなのでしょうか?
また、「レイプの中絶は公費負担制度があるから、それでいいでしょう?」という理屈はどこからくるのでしょうか?
中絶がしやすくなると、安易に中絶する女性が増えて、出生率が下がるから? 避妊に対する意識の低下が起こり、浮気する女性が増えるから? 避妊に失敗したのが悪いのだから、中絶は(女性だけが負担すべき)自己責任? レイプ以外で望まない妊娠したのが悪い、なぜなら結婚や子育てもせずに、セックスだけ楽しむような、ふしだらな女だから? 女性の人権より胎児の人権のほうが大事だから?……etc。
女性の権利がそんな風に貶められている原因である、日本の文化の根本にある「家父長制」を打破しない限り、安全な中絶は手に入れられません。
夏に行われる参議院選挙。
現政権が圧倒的多数を占めると、自らの意思で衆院を解散しない限り、次の国政選挙が行われるまでの最長3年間、選挙に振り回されることなく、現政権がやりたい政策の実現(2023年創設予定の「こども庁」が「こども家庭庁」に名称変更されましたが、最も危険な動きは戦前の家制度復活を目指す憲法24条の改悪です)に集中できる「黄金の3年」に突入してしまいます。現政権にとっての「黄金の3年」は、女性たちにとっては「地獄の3年」です。
中絶費用は高いまま、公費補助もされず、掻爬法という危険な中絶方法が主流でなくなっても母体保護法指定医制度は維持され、女性がだけが罪に問われる堕胎罪は廃止されず、中絶の配偶者同意要件も削除されないでしょう。極めつけは女性が家制度に縛り付けられる憲法改悪です。
アジュマブックスによる書籍の発行は昨年6月に始まりましたが、まだまだ力が足りません。シスターフッドの声を上げ続け、選挙で私たちの意思を示すことで、女性が生きやすい社会に変えていくことを目指します。
注)【訂正版】経口中絶薬とは?副作用は?価格は?日本産婦人科医会に直接、話を聞いた。https://note.com/beball5046/
参考文献)「中絶がわかる本」翻訳者・塚原久美さんの記事とコラム。
「飲む中絶薬」で浮き彫りになった「中絶後進国・日本」の大きな問題~なぜこんなに高額なのかhttps://gendai.ismedia.jp/articles/-/90898
中絶再考 その3 中絶薬を「危険」にしているもの
https://www.lovepiececlub.com/column/13406.html
*「中絶再考」は他の回のコラムも非常にためになりますので是非、ご一読を!