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1.年金制度改革と高齢者雇用
2.カムバック支援助成金
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1.年金制度改革と高齢者雇用
現在審議中の年金制度改革について、前回ではパートタイマーなどの被用者への適用拡大とその影響について述べましたが、今回は在職老齢年金制度の見直しと高齢者雇用への影響について述べたいと思います。
在職老齢年金の見直しは、いわゆる「高在老」と呼ばれる65歳以上を対象とした在職老齢年金を廃止または緩和する方向で議論が進んでいますが、70歳までの雇用推進に関して就業意欲の阻害要因を除去しようという狙いがあります。
現行の在職老齢年金の支給停止基準は、「低在老(65歳未満対象)」が厳しく、「高在老」は比較的緩やかです。
「高在老」は、賞与込みの給与(総報酬月額相当額)と年金月額(老齢厚生年金)の合計額が47万円を超えた場合に、その超過額の2分の1の額を年金月額から支給停止するというものです。ただし、この支給停止に該当する方は、比較的高賃金である社員、役員、経営者の問題と言ってよいかと思います。
そうした中、社会保障審議会年金部会では、「高在老」の支給停止基準を現行の47万円から62万円に引き上げるという案も一時提示されましたが、高所得者優遇であるとの反対意見もあり、現状維持の47万円に落ち着いています。
一方、現行の「低在老」の支給停止基準は、総報酬月額相当額と年金月額を足した額が28万円を超えた場合に、その2分の1が年金月額から支給停止されるというものです。この「低在老」の支給停止に該当する方は比較的多いものと思われます。在職老齢年金の適用を回避するため勤務時間を敢えて調整している方もみられ、働く意欲を阻害しているとの指摘が従来からありました。
そうした中、「低在老」についても「高在老」と同じ支給停止基準の47万円とする改正案が検討されています。
このように、「高在老」は、高所得者優遇との批判があったため、年金財政検証後の議論はやや迷走気味に進みましたが、結局は、現状維持に落ち着きそうです。ただし、現時点でも65歳以上の一般的な従業員は、「高在老」による年金支給停止とはほぼ無関係であり、どちらに転んでも影響はほぼないと思われます。
また、「低在老」が「高在老」と同じ支給停止基準まで緩和された場合は、定年後の再雇用者の処遇決定に際して、年金支給停止を考える必要性は大幅に減少し、従業員の働き方への希望は大きく変わっていく可能性があります。
こうしたことから、事業者側でも従業員の働き方へのニーズを踏まえながら、高齢者の活用を検討していく必要性があるのではないかと思っています。
内閣府の「高齢者の日常生活に関する意識調査」(2014年)によると、65歳を超えても働きたいと回答した人が約8割を占めており、また昔と違ってまだまだ現役で働き続けられる年齢でもあります。
来年度以降には、高年齢者雇用安定法の改正により70歳までの何らかの雇用努力義務が企業に課されることが予定されており、人手不足が続く中、その活用を図ることを検討していくことは必要でしょう。
2.カムバック支援助成金
この助成金の正式名称は、「両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)」と言い、配偶者の転勤、妊娠、出産、育児または介護のいずれかの理由で退職した社員を再雇用した場合に、再雇用から6カ月後と1年後の2回に分けて支給されるものです。
助成金額は、中小企業の場合、1人目が38万円(生産性要件の該当する場合は48万円)、2~5人目が28.5万円(同36万円)で、1事業主につき最大5名まで支給されます。
対象事業主の主な要件は次のとおりです。
①再雇用制度が導入されていること(過去に再雇用制度を設けている場合でも、支給条件に沿った制
度内容に改正すれば対象になる)
②対象社員を採用した日の前日から起算して6カ月前の日から1年を経過する日までの間に会社都合の
退職がないこと
③未払い残業代などの労働関係法令違反がないこと
対象退職者の主な条件は次のとおりです。
①退職理由が妊娠、出産、育児、介護、配偶者の転勤であること
②退職時または退職後に退職理由と再雇用の希望を申し出ていたことが書面で確認できること
③退職した社員が離職前に雇用保険に1年以上加入していること
④再雇用日において、退職日の翌日から起算して1年以上経過していること
⑤退職前の経験、能力などが評価され、再雇用条件に反映されていること
⑥「期間の定めがない契約」かつ「雇用保険」に加入していること
支給申請する際の主なポイントは次のとおりです。
①「期間の定めがない契約」かつ「雇用保険に加入」が条件となるため、パートタイマー等の身分で
の再雇用も助成金の対象になります。
②「再雇用制度規程」を制定する前に退職した社員でも「再雇用に係る申立書」を提出すれば、助成
金を申請できます。
③退職者が退職後に他の会社に勤務していても、助成金の対象になります。
④グループ内の会社で再雇用する場合も、助成金の対象となります。
育児休業制度や介護休業制度等をいくら整備しても退職を選択する方もいるかと思います。
その際は、これまでの経験を活かす意味でも再就職を働きかけることも必要かと思われます。
「いつでもいいからまた戻ってきても良いからね」と一言かけるだけでも離職しようとする社員が受ける印象は違ってくるものと思います。
厚生労働省:「両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)」
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