インタビュー

Algorand Foundation – Summer Miao氏:Algorandブロックチェーンの世界普及の取り組みについて訊く(前編)

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日本では馴染みが薄いものの、世界的に有名なブロックチェーンプロジェクトが存在します。その中でも、Algorand(アルゴランド)は、コンピュータ分野のノーベル賞「チューリング賞」を受賞したMIT教授Silvio Micali(シルビオ・ミカリ)氏らによって設計され、非常に優秀なメンバーが推進していると言われています。

今回は、Algorandの普及を推進するAlgorand FoundationのHead of Communities Asia Pacific、Summer Miao氏にインタビューを行いました。本インタビューは前後編で構成され、前編では主にAlgorandの技術面について訊いていきます。

前編 – 主にAlgorandの技術面

Algorand の立ち上げ経緯

加藤:Algorandの背景や体制面について教えてください。なぜAlgorandプロジェクトを立ち上げるに至ったのでしょうか?また、Algorandには2つの組織がありますが、それぞれどのような役割を担っていますか?

Summer:Algorand(アルゴランド)の創設者である(シルビオ・ミカリ)は、1983年からMITの電気工学/コンピュータ・サイエンス学部の教授を務めています。シルビオの研究テーマは、暗号やゼロ知識、疑似乱数生成、安全なプロトコル、およびメカニズム・デザインとブロックチェーンです。特に、シルビオは、確率的暗号化やゼロ知識証明、検証可能なランダム関数、および現代暗号の基礎となるプロトコルの多くの共同発明者です。

Silvio Micali氏

Silvio Micali氏

Summer:シルビオは、30年にわたり暗号技術に携わってきましたが、Algorandが設立されたのはごく最近のことです。暗号通貨やビットコインを初めて目にしたとき、彼はそのアイデアの美しさに惚れ込みました。しかし、当時のソリューションの美しさには満足できませんでした。そこで彼は、まったく新しいアプローチでこのアイデアに取り組むことにしました。それが、暗号通貨であり、グローバル社会におけるブロックチェーンの約束を果たすための新しい機会となるAlgorandです。

私の所属するAlgorand Foundation(アルゴランド財団)*1は、Algorand Inc.(アルゴランド社)*1から独立して運営されています。Algorand Foundationは、非営利のコミュニティ組織です。プロトコル・ガバナンス、トークン・ダイナミクス、Algorandエコシステムにおける草の根のオープンソース開発の支援に焦点を当てています。一方で、Algorand Inc.は、Algorandプロトコルのレイヤー1の開発と、Algorandブロックチェーン技術を企業導入することに注力しています。Algorand FoundationとAlgorand Inc.は、Algorandコミュニティに向けて共にもたらすことのできる価値をカスタマイズするために、エキサイティングなプロジェクトやイニシアチブで協力しています。

*1 Algorand Foundationはシンガポールを拠点とし、Algorand Inc.は米国ボストンを拠点として活動しています。

Algorand ブロックチェーンの技術概要

加藤:Algorandブロックチェーンについて教えてください。Algorandはどのようなブロックチェーンですか?また、他のブロックチェーンと比べて優れている点、ユニークな点は何ですか?

Summer:Algorandは、世界初のピュア・プルーフ・オブ・ステーク(Pure PoS)ブロックチェーンで、金融の未来(FutureFi)のために設計されました。Algorandの技術は、オープンでパブリックなネットワークという基本的な要件を超えて、FutureFiの世界で必須となる高度なスマートコントラクトを提供する高性能なレイヤー1ブロックチェーンを実現します。セキュリティやスケーラビリティ、完全なトランザクションのファイナリティ、組み込まれたプライバシー、Co-Chain(コ・チェーン:Algorandで構築できるプライベート・チェーン)が提供されます。

Algorandでは、ビザンチン合意に基づいて構築されたPPoSコンセンサス・プロトコルを採用しています。これは、中央機関がなくても合意形成を行うことができ、悪意のないステークが超多数を占めている限り、悪意のあるユーザーを容認することができるということを意味します。新しいブロックの選択に対するユーザーの影響力は、システムへのステーク(AlgorandのネイティブトークンであるALGOの数)に比例します。ユーザーは無作為かつ秘密裏に選ばれ、ブロック提案とブロック提案への投票の両方を行います。すべてのオンラインユーザーは、ブロック提案者と投票者に選ばれる可能性があります。あるユーザーが選ばれる可能性は、そのユーザーのステーク額に正比例します。これにより、真の非中央集権型ネットワークにおける完全な参加や保護、および速度が保証されます。

数秒でブロックが確定するAlgorandの取引スループットは、大規模な決済ネットワークや金融ネットワークと同等なレベルを確保しています。また、Algorandは、即時の取引完了(ファイナリティ)を提供する最初のブロックチェーンです。フォークすることはありませんし、不確実性もありません。

ネイティブコインのALGOの役割

加藤:ALGOは、Algorandブロックチェーンにおいてどのような役割を果たしますか?また、現実的に多くの人がトークンで利益をあげることに興味があります。暗号通貨投資家から見た場合、ALGOを保有するメリットとは何ですか?

Summer:ALGOは、Algorandブロックチェーンのネイティブな暗号資産です。現在使用されている暗号資産の中で、最も速く、最も安全で信頼できる暗号資産の一つです。

また、ALGOは誰にでも即時送金することができます。電信送金やフォームへの記入、銀行や取引所の利用などは不要で、遅延はありません。国をまたぐお金の移動は何日もかかる作業ですが、ALGOはそれを4.5秒以下で行うことができます。そして、ALGOは受信者のウォレットに入り、すぐに使用することができます。さらに、ALGOの送金はAlgorandブロックチェーンに記録されるので、支払い側と受け取り側の検証が容易になります。

そして、ALGOのようなデジタル・マネーは、1人だけでなく多くの人に、瞬時かつ同時に送ることができます。ALGOを1人に送るのも、大勢に送るのも、実質的には同じデジタル作業であり、同様の速度で行われます。ALGOであれば、4.5秒以内に、何人にでもお金を送ることができるということです。

現在(2021年末まで)、ユーザーはオンライン・ウォレットにALGOを保有することで、Algorandエコシステムに参加し、ALGOのステーキング報酬を得ることができます。ステーキング報酬は、年利約6%になります。プライベートまたは非カストディアンのオンライン・ウォレットは報酬を直接受け取りますが、カストディアンまたは取引所のウォレットは各カストディアン/取引所からこれらの報酬を受け取る必要があります。

注目すべきは、Algorand Foundationが4月12日に公式のガバナンス提案を発表したことです。この提案は、今年の後半に報酬が「参加報酬」から「ガバナンス報酬」に移行するというものです。財団は、この提案が、パブリックブロックチェーンのガバナンスに対して、ユニークで革新的、かつ包括的なアプローチを生み出すという目標に合致すると考えています。この提案では、すべてのステークホルダーが、AlgorandエコシステムとALGOトークン・ホルダーのコミュニティの成長の方向性をコントロールする権限が与えられます。ALGOの長期保有と投票に実質的なコミットメントをすることで、ガバナー・コミュニティは、このガバナンスメカニズムへの参加から同じ割合で利益を得ることになるでしょう。すべてのアカウントがこの意思決定プロセスに投票できるようになるので、エコシステムのすべての参加者は提案書をよく読んでいただき、今後の決定に参加するためにAlgorandのガバナーになっていただきたいと思います。

Algorand公式ウォレットは、Algorand Walletから入手することができます。ALGOのステーキングは、ロック不要で、ただウォレットに保有しておくだけで報酬を獲得することができます。

また、ステーキング報酬(参加報酬)は今年中に実施されるガバナンス分散化に伴い「ガバナー報酬」に移行予定です。移行後にガバナンスに参加し報酬を得るにはロックが必要になります。

Algorand Wallet

DApps開発者のメリット

加藤:Algorandを使ってDAppsを開発するメリットは何ですか?また、多くのブロックチェーンプラットフォームが登場していることから、開発者はそのブロックチェーンプラットフォームに慣れるための大きな学習コストを支払わなければいけません。Algorandにおいて、学習コストを下げる仕組みがあれば、それがどのようなものかも教えてください。

Summer:良い質問ですね。現在、たくさんのブロックチェーン・プラットフォームがありますが、ブロックチェーンはまだ広く普及していません。なぜでしょうか?それは、分散性、セキュリティ、スケーラビリティを同時に実現するには、技術が不十分だったからです。でもそれはもはや過去のことです。AlgorandのPure PoSプロトコルは、ブロックチェーンの新たな基準となるものです。

これまでのところ、Algorandの技術は、500以上のグローバル企業の第一選択肢となっています。金融サービス、不動産、ヘルスケアなど、あらゆる分野の開発者やビジネスが、Algorandをベースに構築することを選択している理由をご紹介します。

    1. 毎秒トランザクション処理能力 1,000 TPS以上 – 数十億のトランザクションにも容易に拡張可能
    2. 5秒以下の遅延 – エンドユーザーに最適な体験を提供
    3. 即時のトランザクション完了 – 数学的にフォークしないことを保証
    4. 包括的な開発ツール – Java、JavaScript(node.jsおよびブラウザ)、GoおよびPython用のSDKを提供済み
    5. 完全な非中央集権・分散化
    6. 低い取引コスト*1
    7. 真のテクノロジー・パートナー – 世界的に有名な専門家からなるチームが、成功するアプリケーションの構築を支援

専用のDeveloper Portalでは、開発者に包括的な学習コンテンツ・ポータルを提供しています。また、我々はReachとの提携し、JavaScriptのような言語とガイド付きのチュートリアルを提供しています。これにより、Algorandの開発への参入のハードルを下げ、フルスタック開発者からAlgorandの開発者へと、いくつかの簡単なステップで移行できるようになります。さらに、開発者は、 Algorand Developer Office Hourのような、様々な開発者向けウェビナーを参考にすることができます。

*1 2021年4月25日現在、Algorandの取引コストは約0.125円(=0.001ALGO)になります。

Algorandに関する情報

公式情報

Algorand Foundation

Algorand Inc.

日本アンバサダーによる日本語のAlgorand公認コンテンツ

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この記事を書いた人

TOKEN ECONOMISTのDirector。「ブロックチェーンによる少し先の未来を魅せる」をポリシーに、注目しているプロジェクトの紹介やインタビューを行っています。

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