かといってそんなに話もなかった話
2001年6月。
同時多発テロが起こるちょっと前。
ぼくはbeat crusadersの一員としてアメリカツアーに行きました。
確か移動を含めた15日くらいの滞在で15箇所くらいライブをするという謎の行程で、過酷を通り越していろんな意味で笑ってしまうツアーでした。
そのツアーはここで書こうとすると紙面(?)が足りないくらい色々なことがあったわけですが、中でもぼくが覚えているのは一緒に回ったクラッシュストーリーというバンドのドラム・デイヴのことです。
デイヴはわがままなアメリカの白人のイメージとは程遠いものすごく温厚な人で、このツアーと通して、仲良くなれたナイスガイでした。
砂漠の街にライブに行った時のこと。
そのレコード屋さん兼ライブハウスのオーナーが海を渡ってやってきた東洋人(ぼくら)にご馳走してくれるという話になりました。
その人はぼくらに食べたいものを聞いてきたので、アメリカに上陸してから肉しか食べてなかったぼくらは野菜が食べたいというと、この街で一番美味いサラダを食わしてやるぞ!と意気揚々にぼくらをレストランに連れて行ってくれました。
ラーメンどんぶりみたいな大きな皿に盛られた大盛りのサラダ。
そんなアメリカンサイズのサラダが全員の前に出されました。
久々のサラダなので、喜び勇んで一口。
マズい。
なんで??
サラダってどこで食べても同じでしょうがってこれ、ドレッシングがまずいんだね。
異常に脂っこくておかしな匂いもしております。
これは全部食えないかもなぁ、せっかく奢ってくれるっていうのに悪いなぁと思ってオーナーのほうを見ると、親指を立てて美味いだろ?のポーズをしております。
アメリカ人の味覚ってどうかしてるね。
これはアメリカでは美味しいとされているのかしら?単純に日本人の口には合わないのかしら?と思って、デイブの方を見てみるとデイブもオエっとえずきながら涙目で頬張ってます。
やっぱ、不味いんじゃん!
しかしながら、不味いと言えず一生懸命食べているデイヴに妙に親近感を覚えたのでした。
時は2010年頃の日本。
その日ぼくは渋谷でこむぞうという番組の企画・UMU BARを開催しておりました。
ただ飲んで騒ぐだけの教養もプライドもない企画=UMU BAR。
酔いが回ってグズグズも絶頂に達した頃、友達がやって来ました。
その友達は海外のバンドを日本に呼んでイベントをしている人なのですが、そいつがツカツカとぼくのほうにやって来て、すげー人連れて来たけど呼んでいい??と言いました。
こんなイベント、来た人が怒りださない限り誰でもウェルカムなので、もちろんいいよというと、そいつが連れて来たのは、なんとクラッシュストーリーのデイブではないですか!!
酔っ払っていて一瞬誰かわからなかったのですが、
そこにいるのは紛れもなくデイヴです。
どうやらクラッシュストーリーとは別のバンドのツアーで日本に来ていたようでした。
おーーーデイヴ、久しぶり!!
アツく抱擁する2人。
あつく抱擁するのですが、話がそこから先に全く進みません。
ないんです、話が。
マジで話すことがないんです。
頑張って約10年前のアメリカツアーの話を引き出すには酒に酔いすぎています。
伝えるべき近況あったとしても、ぼくにそれを英語で説明する能力もありません。
デイヴの日本語に至ってはぼくの英語以下です。
そもそも素面で10年近く前に2週間だけ一緒にいた人と再会しても、そこまで話すべき話なんてないんですな。あるのは、再会の感動だけですわ。
なんだかわからないけど
ただただオーオーといって抱擁しているだけの2人。
というわけで、結局ほとんどなにも話さずに
最終的に謎のイベントに来てしまって若干バツの悪そうなデイヴと握手をしてお別れしました。
でもまぁ、言葉なんてどうでもいいんですね。
元気にしている姿を見れただけで。
会って抱擁するだけで。
デイブ、元気にしているかな?
次に会ったらもっと話すことはないと思うけどね。