アジュマブックス・メールマガジンをご購読いただきありがとうございます。
コロナ禍の中、東京オリンピック・パラリンピックが強行開催され、犠牲と期待とは裏腹な総選挙の結果に、落胆した2021年。女性の権利向上のためには、社会制度の改善が必須なのですが、なかなか急速には変わっていきません。
とはいえ女性たちを含め、人々の意識は変わりつつあり、意識の変化は司法の世界にも徐々に反映されつつあります。
フェイクニュースを拡散させ、名誉を傷つけるツィートを組織的に行ったtwitterアカウントのDappi。この民主主義を歪める発信者を特定するためには、まず、twitter社に発信者情報開示を申し立て、IPアドレスを入手。次にプロバイダーであるNTTコミュニケーションズ等に発信者情報開示請求の裁判を起こす必要がありました。プロバイダー責任制限法に基づく2回の開示請求は、今年4月に改正され、施行は来年末までですが、1回の手続きでできるようになります。
フォトジャーナリストの安田菜津紀さんが、出自に関する差別的なツィートをした2名に対して195万円の損害賠償を求める訴訟を起こしました。2017年に成立したヘイトスピーチ解消法は単なる理念が書かれたもので、罰則を科するものではありませんでした。しかし、安田さんが起こした発信者情報開示訴訟では、司法側の意識変化から、今回のツィートは単なる誹謗中傷ではなく、「(不特定多数に向けられているように見える)特定集団に向けたヘイトスピーチ」=「差別&違法行為」であり、「人格権侵害」であることが法的に認められました。
ツイッターの投稿で名誉を傷つけられたジャーナリストの伊藤詩織さんが起こした裁判では、ツィートした漫画家に88万円、その投稿をリツイート(RT)したクリエイターと医師には11万円の賠償を命じる判決が下されました。訴訟にかかった労力に比べ、賠償金額が安すぎるという問題に対して、9月からの法制審議会総会では、侮辱罪に懲役刑を追加する案が諮問され、時効も1年から3年に伸び、加害側の特定や捜査に時間をかけられようになります。また、懲役刑が導入されれば、幇助罪や教唆罪も適用できるようになり、投稿を放置したSNSやサイトの運営側の刑事責任も追及される可能性が生じます。
意見を言いやすい社会、弱者を排除しない、差別しない社会は、少しずつですが実現に向けて動き出しています。ひとりひとりの尊厳を大事にする社会は、女性だけでなく、男性も生きやすい社会ではないでしょうか。
今月、ジェンダーバランスについての調査中間報告を行った有志団体「表現の現場調査団」に参加する映画監督の深田晃司さんも、アシスタント時代は、毎日怒られて、殴られたり、蹴られたりというハラスメントに苦しんだそうです。男社会、偏ったジェンダーバランスの社会は、そこに所属する男性をも傷つけています。
すべての人が生きやすい社会のためにも、女性が生きにくい今の社会に対して、めげずに声を上げ続けていきましょう。