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1.パートへの社会保険適用拡大の動きを考える
2.職場のパワハラ防止対策について
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1.パートへの社会保険適用拡大の動きをを考える
現在、厚労省の社会保障審議会では、社会保険の適用をパートに拡大する議論が行われています。
現状では、パートの適用基準が「週所定労働時間または月所定労働時間日数が常時雇用者の4分の3以上」(いわゆる4分の3ルール)となっていますが、既に被保険者数501人以上の企業(特定適用事業所)では、週所定労働時間が20時間以上などの要件を満たすパートは社会保険が適用されることになっています。
加えて、被保険者数500人以下の企業についても、労使合意により任意に「特定事業所」になることができます。
これを週所定労働時間が20時間以上などの要件を満たすパートについては、企業規模要件を撤廃し、社会保険を適用しようとするものですが、現時点では、どうなるかは不明です。
もし実現されれば、週20時間勤務、月100時間前後勤務のパートのほとんどが、新たに社会保険の適用を受けることになり、その影響は、企業と従業員双方にとってかなり大きいものと考えられます。
まず、企業にとっては社会保険料負担が増加しますが、そうだからと言って、人手不足の中、貴重な戦力であるパートの勤務時間を減少させることは簡単ではないのかも知れません。
そこで、本人の事情にもよりますが、いずれ社会保険料を負担しなければならないのなら、さらに働ける余地があるパートをできるだけ戦力化するといった方策も考えられます。
例えば、週30時間以上勤務可能なパートの中から能力的に優れた者を正社員候補生とし、人手不足時代の人材確保策のオプションに加えるようなことです。
次に、パート従業員にとっては、自身が社会保険の適用になることで、いわゆる「130万円の壁」は意味がなくなります。
代わって登場するのは、夫が配偶者控除を受けるための「150万円の壁」になると想定されます。
ただし、この壁は、年収150万円を超えても一気に配偶者控除がなくなるわけではなく、年収の増加に対して38万円の控除額が段階的に低下し、年収201万円を超えると0になる仕組みになっています。
こうしたことから、実際には壁というよりは、階段の入り口のようなものですが、主婦層のパートにとっては心理上の壁になると思われます。
社会保険の適用拡大により、パートがどのような行動・選択をしたかについては、現行の特定適用事業所等において前例があり、労働政策研究・研修機構(2017.7~9調査)による調査結果も出ています。
その調査結果によると、「働き方を変えなかった」が約6割、次に「今後考える」が2割で、「働き方を変えた」は約15%とさほど多くありませんでした。
それでは「働き方を変えた」パートがどのように変えたかというと、「収入増のため所定労働時間を延長」が約55%、「社保適用を回避するために所定労働時間を短縮」が約33%、「社保が適用されない企業に転職」が8.4%となっており、合わせて約4割が社保適用を回避する行動をとっていることになります。
次回の適用拡大では、「社保が適用されない企業に転職」の選択肢はなくなり、現在の企業において所定労働時間を延長するか、維持するか、あるいは短縮するかの選択になりますが、どのように考えられるでしょうか。
現時点では、パートの適用拡大に向けた審議がどのように進むかは不明ですが、貴重な労働力であるパートの活用について、所定労働時間延長の可否について本人と十分な話し合いのうえ、勤務時間の増加等により戦力化を図ることは、現時点ても可能なことであると思われます。
その中では、「短時間正社員制度」を設けることも考えられるでしょう。
2.職場のパワハラ防止対策について
職場のパワハラについては、労働施策総合推進法の改正(令和元年6月5日公布)により、雇用管理上必要な措置を講じることが、事業主の義務となりました。
施行は、令和2年6月1日、中小企業は令和4年4月1日でそれまでは努力義務です。
また、11月20日には、事業主が雇用管理上講ずべき措置等についての指針10項目が示されています。
①事業主の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②対処方針を定め、労働者に周知・啓発すること
③相談窓口を定め、労働者に周知すること
④相談窓口の担当者が適切に対応で きるようにすること
⑤事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥事実確認ができた場合において、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦事実確認ができた場合において、速やかに行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧再発防止に向けた措置を講ずること
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずること
⑩相談等をしたことを理由として不利益な取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する
こと
今後、これら指針に沿った体制の整備と就業規則の改正などが必要となるでしょう。
しかし、いくら周知・徹底を図ってもパワハラが生る根本原因は、1人ひとりの心のあり方に行き着くと思っています。
当事務所でもパワハラに関する研修を実施することがありますが、従来の研修は、「こういうことがパワハラに該当する、しないので十分注意しましょう」といった内容が多かったように思われますが、最近は、「アンガーマネジメント」や「アサーション」などの手法により、その感情を生み出す心理状態にまで踏み込んで、自分の感情を客観的に見つめ直し、怒りの感情を抑える、あるいは発生を少なくすることも研修の中で行うようになってきているようです。
ただ単に、パワハラ防止の観点からだけではなく、1人ひとりが自己をよく知ることで他者をよく理解することなどを通して、職場でのコミュニケーションのあり方も見直していくことが必要であると考えています。
厚生労働省:「職場のパワーハラスメントについて」
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