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1.年金法の改正とその影響について
2.令和2年度の「両立支援等助成金」の改正内容
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1.年金法の改正とその影響について
令和2年3月3日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案」が国会に提出され、①厚生年金保険の適用拡大や②高齢期の就労と年金受給の在り方等について、改正が行われることになりました。
①被用者保険の適用拡大
短時間労働者を厚生年金保険の適用対象とする事業所の企業規模要件が、段階的に引き下げられ、現行500人超の企業規模要件が令和4年10月から100人超に、令和6年10月から50人超になります。
ここでいう短時間労働者とは、以下の4つの要件をすべて満たす労働者が該当になります。
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生でないこと
また、企業規模要件の50人超、100人超という従業員数は、週の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上の人員を算定し、それ未満のパート労働者は含みません。
さらに、月ごとの従業員数の算定により、直近12カ月のうち6カ月で基準を上回ったら対象となり、一度適用対象になった企業は、従業員数が基準を下回っても引き続き適用となります。ただし、被保険者の4分の3の同意によって適用対象外となることは可能です。
なお、法人なら同一の法人番号を有する全事業所単位で従業員数が算定されます。
まず、該当しそうな企業は、適用対象となる短時間労働者の現状の人数を把握し、社会保険料の試算を行ったうえで、どの程度の負担増となるのか、シミュレーションを行う必要があるでしょう。
企業にとっては、社会保険料の負担増となりますし、従業員が社会保険の適用対象となりたくないと労働時間の短縮を希望することにより、ただでさえ人手不足の状況で、人材確保に支障をきたすことになることも考えられるからです。
しかし、500人超規模の企業が適用対象となった前回適用拡大の際には、労働時間を短縮した人よりも労働時間を延長した人の方が多いという労働政策研究・研修機構の調査結果もあります。
そのため、社会保険の適用の問題で、これまで短時間でしか働けなかった従業員がいるのであれば、これを機に、労働時間を延長できないか、意向を確認してみるのも一案です。
なお、50人以下の規模の企業も、今後、適用拡大の方向性は残っていることに注意しておく必要があります。
②高齢期の就労と年金受給の在り方
令和4年4月1日より、60~64歳の在職老齢年金制度の支給停止基準額が現行28万円から47万円に引き上げになるとともに、65歳以上の労働者を対象に在職定時改定の仕組みが導入されることになります。
まず、60歳台前半の現行の在職老齢年金制度は、賃金と年金の合計額が28万円を超えると段階的に支給停止となっています。
そのため就労を抑制している状況が一定程度確認されていること、60歳台前半の就労、特に令和12年度まで支給開始年齢の引上げが続く女性の就労を支援すること、そして制度を分かりやすくすることなどから改正されるものです。
人手不足が続く中、高齢労働者や女性労働者にもっと働いてほしいと思っていても、在職老齢年金制度の支給停止基準額に阻まれている企業もあるかと思います。
これを機に、高齢労働者や女性労働者の活用方法、賃金の増額や労働時間の増加の可否を改めて検討し、対象となる従業員の意向を確認する準備を行うことをお勧めします。
次に、現行の退職改定制度は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に受給権取得後の被保険者期間を厚生年金の額に反映させ改定することになっています。
これを65歳以上の方を対象に、在職中から年金額の改定を毎年行い、早期に年金額に反映させる仕組みにし、退職を待たずに年金額の増加を実感できるようにするものです。
社会保障審議会年金部会の資料では、月額10万円で1年間就労した場合は年間7,000円程度、月額20万円の場合は年間1万3,000円程度、月額30万円の場合は年間2万円程度の年金増額になると推計されています。
就労により従業員自身の年金額が目に見える形となるのは、モチベーションの維持・向上にもつながるため、従業員向けに在職定時改定制度の周知を行うことも検討されることをお勧めします。
厚生労働省:「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の概要」
2.令和2年度の「両立支援等助成金」の改正内容
令和2年度に改正となった助成金のうち、両立支援等助成金の「育児休業等支援コース」と「介護離職防止支援コース」について、ご紹介します。
①育児休業等支援コース
育児休業等支援コースでは、育休復帰支援プランを策定・導入し、そのプランに沿った円滑な育児休業の取得および職場復帰に取り組んだ場合の育児休業取得時と職場復帰時の助成金がよく活用されていますが、仕事と育児の両立が困難な時期にある労働者の支援に取り組んだ場合の職場復帰後支援の助成金もあります。
この職場復帰後支援の助成金について見直しが行われ、法定を上回る子の看護休暇制度(有給)を導入し、労働者が職場復帰後、6カ月以内に10時間以上(従来は20時間以上)利用した場合に緩和されました。
ここでいう法定の子の看護休暇制度とは、小学校就学前の子を養育する従業員に対し、申出により子が1人の場合には1年に5日まで、2人以上の場合には1年に10日まで付与するものです。
助成額は、制度導入時に28.5万円(生産性要件に該当する場合は36万円)、制度利用時に1,000円(同1,200円)×利用時間数で、制度導入時は1回限り、制度利用時は最初の支給申請日から3年以内に5人までとなっています。
②介護離職防止支援コース
労働者が介護休業を取得し職場復帰した中小企業事業主に対する助成金について、合算して14日以上の休業期間を5日以上に緩和されました。
助成額は、取得時に28.5万円(生産性要件に該当する場合は36万円)、復帰時に28.5万円(同36万円)で、1年度5人までとなっています。
また、労働者が就業と介護との両立に資する制度を利用した中小企業事業主に対する助成金について、利用期間を42日以上から20日以上に緩和されました。
ここでいう介護両立支援制度とは、所定外労働の制限制度、時差出勤制度、短時間勤務制度、法定を上回る介護休暇制度など8つあり、いずれか1つ以上の制度を導入することが要件となっています。
助成額は、取得時に28.5万円(生産性要件に該当する場合は36万円)で、1年度5人までとなっています。
厚生労働省:「両立支援等助成金」
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