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1.メンタル復職時の試し出勤における賃金と作業をめぐる対応
2.時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)
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1.メンタル復職時の試し出勤における賃金と作業をめぐる対応
近年、うつ病などのメンタルヘルスに疾患する労働者が急増し、その復職の判断にあたり「試し出勤」を行うケースもあるかと思います。
この「試し出勤」の有用性については、労働者の復帰を支援し徐々に段階を高めながら、実際的な復職可否の判断を可能とする方法の1つとして評価されます。
この趣旨に沿い、労使双方にメリットがあれば、積極的に活用すべきでしょう。
一方で、「試し出勤」の中心的課題としては、①休職者に何をさせるべきか、②休職者に賃金を支払うべきか、という2点があります。
①休職者に何をさせるべきか
例えば、定められた時間に職場に出勤して一定時間を自由に過ごすだけの作業や、業務とは関係のない本を読んでレポートを書かせる等の作業もよくみられますが、状況によっては、こうした作業が妥当な場合も決して否定できないものと思われます。
しかしながら、「試し出勤」の目的が、休職者が従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したか否かを適切に見極めることにあることから、そのためには、できる限り休職者の従前の業務の一部をさせるべきであると考えます。
②休職者に賃金を支払うべきか
「試し出勤」においては、少なくとも当初は、本来の労働契約上の債務の本旨に従った労務に比べて軽減された作業をさせることが通常です。
そのような不完全な労務提供に対しては、労働契約上の賃金を支払う義務を負わないというのが、労働契約における原則です。
この点について、NHK名古屋放送局事件高裁判決(平成30年6月25日)では、精神疾患領域における疾病による傷病休職からの復職可否の判断のために行われたテスト出勤中の賃金請求権の有無が問題となり、テスト出勤中の休職者の労務提供について、労働契約上の賃金の支払義務を否定しています。
また、テスト出勤を就業規則に定めて制度化した場合には、必ず就業規則中にその旨の除外規程を置くことが必要となります。
(賃金規程)第●条
テスト出勤中の賃金については、本規定を適用せず、別途会社が定めるところによる。
それでは、休職者にいくら賃金を支払うべきかという問題になりますが、それは休職者に何をさせるべきかという問題と密接に関連しており、両者をセットで考える必要があり、休職者の状況により異なるものと考えられます。
なお、私傷病の休職者に対しては、健康保険から傷病手当金が最長1年6カ月支給されることになっています。
しかし、この制度はあくまで、やむを得ない不十分な労務提供に対する賃金補填の性格であり、支給調整による減額を嫌って一部働けるのに働かないのは、復職を遅らせることにつながりかねないことはいうまでもありません。
2.時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)
時間外労働等改善助成金には、3つのコース、すなわち「職場意識改善コース」「時間外労働上限設定コース」そして、「勤務間インターバル導入コース」があります。
「勤務間インターバル導入コース」以外は、そもそも対象となる事業者に制約があります。
例えば、「職場意識改善コース」は、年次有給休暇の年間取得日数が13日以下であり、かつ月間平均所定労働時間が10時間以上であることなどが要件であり、「時間外労働上限設定コース」は、36協定において時間外労働時間数を月45時間以上または年間360時間以上に設定していることなどが要件であり、対象となる事業所も限られていると思われます。
一方、「勤務間インターバル導入コース」は、勤務間インターバル制度の導入を就業規則で定めていない事業所であれば、申請可能となっています。
この時間外労働等改善助成金の支給決定を受けると、働き方改革に取り組むうえで新たに労働者を雇い入れる企業に対して、1人60万円(短時間労働者の場合は1人40万円)、さらに目標達成助成として1人15万円(同10万円)支給される「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」を申請することができます。
同助成金は、今年度目玉となる大型助成金です。
したがって、人員の増員計画がある企業は、是非ともこの時間外労働等改善助成金、特に対象事業者の制約が少ない「勤務間インターバル導入コース」の申請を検討することをおすすめいたします。
この助成金は、勤務間インターバル制度を導入するにあたり、労務管理用ソフト・機器等の購入や外部専門家によるコンサルティング、就業規則等の作成・変更等にかかる費用の3/4を補助するもので、上限は今年度より50万円から100万円へ大幅に引き上げになっています。
申請上の留意点は、以下のとおりです。
①購入する機器等は、すべて同一条件で相見積もりを取り、最も低い金額を提示した業者から購入
しなければなりません。
②労働局から交付決定が出る前に、業者と契約したり、機器を購入したりすると、助成金は支給さ
れません。
③交付申請締め切日は、11月15日で、支給申請の締切日は、令和2年2月3日となっています。
今年度から労働時間の客観的把握が義務化されたことに伴い、タイムカードやICカードなどを導入する企業も増えており、その購入費用の一部を補填する助成金として検討されてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省:「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)のご案内」
厚生労働省:「人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)のご案内」
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