◆法改正や施策情報、助成金情報などを中心に、定期的に配信しています。
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1.雇用保険法施行規則の一部改正
2.副業・兼業について
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1.雇用保険法施行規則の一部改正
本年3月30日付で雇用保険法施行規則の一部改正の厚生労働省令が公布され、雇用保険の届出・申請手続が変更になっています。その主な内容は、以下のとおりです。
1.本年3月30日施行済みの規則
(1)被保険者氏名変更届の手続きの緩和
改正前は、事業主が雇用する被保険者が氏名を変更したときは、速やかに届けなければないとさ
れていましたが、事業主の事務手続の簡素化の観点から、事業主の行う一定の届出(転勤届等)の
際に併せて行えばよいことになりました。
(2)離職証明書および離職票の様式の一部改正
従来は、有期雇用労働者の雇用期間や更新回数に上限を設けた雇用契約をしていて、それらの期
間満了を理由とする離職の場合であっても上限到来によるものか否かについては特段の記載は必要
ありませんでした。
改正後は、離職証明書及び離職票について、有期雇用労働者の雇用期間や更新回数の上限等の情
報を把握するため、離職理由記載欄の項目が追加されています。
2.本年5月1日施行の規則
各種届出の際の個人番号の提出(新設)
雇用保険届出書等への個人番号記載については、これまで対象届出書等が限定されていたうえ、
番号未記入であってもハローワークでは受け付けなければならないことになっていました。
改正後は、今後日本年金機構等との個人番号を介した情報連携が開始されることを踏まえ、これ
まで個人番号の届出がない者については、当該者に係る一定の届出又は手続の際に、個人番号の登
録・変更届の提出を求めることになりました。
すでにハローワークには、「5月以降、必要なマイナンバーの記載・添付がない場合には、補正の
ため届出等を返戻します」とのリーフレットも置かれています。
3.本年10月1日施行の規則
雇用継続給付の届出書の本人署名・押印の省略
現行は、雇用継続給付(高年齢雇用継続給付・育児休業・介護休業)の支給申請書等の所定欄に
本人の署名・押印が必要ですが、改正後は、本人及び事業主の事務手続の簡素化の観点から、本人
から届出等について同意を得たことが明らかとなる書類を保管しておくことを要件として、本人の
署名・押印を不要とすることになります。
これにより、特に育児休業給付については、本人が休業中であることから、2カ月ごとに支給申請
書を本人へ郵送して署名・押印を求めていましたが、その手続きが省略できることになります。
内閣府の規制改革推進会議では、厚生労働省関係の諸手続きのあり方につい引き続き議論されており、今後、今回の改正以外についても変更される可能性があると思われます。
2.副業・兼業について
近年、副業・兼業を希望する労働者は増加傾向にある一方で、多くの会社では副業・兼業を原則認めていません。
こうした中、厚生労働省は、平成30年1月に、働き方改革実行計画を踏まえて、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、また、モデル就業規則で、従前の副業・兼業についての規定を削除して、届出制とする規定を新設し、副業・兼業を推進しています。
副業・兼業については、次のように考えられています。
(1)裁判例では、副業・兼業について、労務提供上の支障となる場合や企業秘密が漏洩する場合、就業
により企業の利益を害する場合などは、使用者において副業・兼業を制限することができると解さ
れています。
(2)副業・兼業では、労働時間の通算の問題があります。
労働時間の通算については、労基法において「事業場を異にする場合においても労働時間に関す
る規定の適用については通算する」とされており、異なる事業主の事業場である場合も含まれると
解されています。
そのため、どの労働時間を法定時間外労働として取り扱うかなどの問題点があり、その点、ガイ
ドラインでも明らかになっていません。
(3)副業や兼業では、安全配慮義務の問題があります。
副業・兼業による長時間による長時間労働によって労働者の心身に悪影響が生じた場合、使用者
の安全配慮義務違反が問われる可能性があります。特に、モデル就業規則のような届出制を採用す
る場合には、使用者は副業・兼業の内容を把握している以上、知らなかったという理由は成り立ち
ません。
ガイドラインでは、労働者も自ら本業および副業・兼業の業務量や進捗状況、それらに費やす時
間や健康状態を管理する必要があるとされていますが、一方で、使用者は、安全配慮義務を負って
いることに留意が必要である旨も記載されています。
以上のように、副業・兼業にはなお問題点があることから、各企業における必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務についての対応などの実態を踏まえて、副業・兼業についてルールを明確にする必要があります。
一方で、副業・兼業には、次のようなメリットもあると考えられます。
① 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる
② 労働者の自律性・自主性を促すことができる
③ 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する
④ 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる
以上のことから、副業・兼業については、運用面での留意事項を十分考慮しながら前向きに検討されてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省:「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
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